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ムチャクチャだけど筋が通っている“グローバルモンスター上司”とは

【閲覧注意】大人の時間

 世界中どの会社でも「結果を出す人」にはどんな共通点があるのでしょうか。今回は「“正しい”ワンマンスタイルで人を動かす」について、エピソードを交えて紹介します。

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 外資系エグゼクティブとはどんな人たちなのでしょうか? 「どの会社でも結果を出す人」の共通点を探る前に、そのパーソナリティーに迫ってみようと思います。

 私のついた最強のモンスターの1人にイギリス人のボスがいます。彼との出会いはヘッドハンターからの1本の電話。当時、このヘッドハンターの紹介で別の会社への転職が決まっていた矢先のことでした。

「お願いユミコ、助けると思ってサクラで、ある面接を受けてほしい。雇い主はその会社で既に8人も秘書をクビにしていて、使える候補者を連れて来なければもう私に仕事をやらないと警告を受けてしまったの」

 思えばそれが私の災難の始まりでした。お世話になっているヘッドハンターの頼みは断れません。それに「8人もクビにしているモンスターに会ってみたい」という、私の好奇心からの悪い虫が騒ぎ出しました。

 面接の当日、部屋に現れたモンスターは優雅な身のこなしで手を差し出し、とっておきの低いキラーボイスでひと言、「ハロー」と言いました。ですが、面接が始まると飛んでくるのは鋭い質問や皮肉ばかり。そして、とどめに「私はね、はっきり言うが秘書には何も期待していない。誰も私を満足させられないからね」とニヤッと笑って言ったのです。

 そのとき、「絶対にこのモンスターに、秘書の存在意義を分かってもらう!」と思ってしまったのが運のつき。あとから、私の話を聞いて慌てて止めようとするヘッドハンターを振り切り、このボスの元への転職を決めてしまいました。

●「誰もが納得できる状況を作り出せ」

 それまでに何人ものモンスター上司について、ある程度の経験を積んできたはずだったのですが、それらの経験が瞬時に吹き飛んでしまうくらいの過酷な日々が始まりました。 希望する飛行機が満席で取れないと言おうものなら、眉毛をピッと上げて一喝。

「満席でチケットが取れないというのは君の問題だろう。私には一切関係ない。君に給料を支払う理由はただ1つ、私の望み『全て』を叶えることだ。どうにかしろ!」

 また、別のときには「今すぐこの情報がほしい」と。でも、その情報を持っている本人は飛行機の中で、あと6時間は地上に降り立ちません。そんな状況を説明しても、ボスには通用しないのです。今必要なものは、今。「自分は会社から高いお金をもらって働いている。その会社のお金と時間を、君に補填(ほてん)できるのか?」というわけです。

 彼は、気に入らなければ自分の上司からの呼び出しでも動きません。

「私が上司に会いに行かなくて困るのは君だよ。『秘書から聞いていなかった』と言えば済むのだからね。さあ、どうする?」

 鷹のような鋭い目でこう言います。 要は、「自分も相手も納得できる状況を作り出せ」ということです。一見、傍若無人(ぼうじゃくぶじん)な言動のようですが、彼の言うことは常に一本筋が通って、冷静に考えると実は正しいのです。

 ですから、誰も文句が言えない――故にモンスターは、モンスターであり続けるのです。

●仕事のために全力投球し、さらに高いレベルを求める

 彼は、毎日誰よりも早くオフィスに来て、24時間×7日間、つまり毎日休みなくいつでも仕事ができる態勢でいます。必要であれば何時でもオフィスに残り、週末はどんなにリラックスしていてもすぐに仕事に戻ります。世界中に出張し、どんなに時差があろうが、どんなにその前日に友人と飲み明かして寝ていなかろうが、必ずバリッとしたスーツに身を包み、さわやかにデスクについています。

 時間を1分でも守らないスタッフには容赦なくお叱りが飛ぶだけでなく、自身も必ず会議やイベントの遅くとも5分前には準備万端の状態にあります。人の顔と名前、必要な情報は瞬時に記憶し、自分のスケジュールは何カ月先までも頭に入っています。恐ろしいほどの記憶力で、スタッフは常にテストされているような状態です。

 同時に、そのキラーボイスと研ぎ澄まされた会話力を武器に、どんな苦手な相手からも、あるいは上下関係や会社の内外、男女を問わず誰とでも人脈を広げて必要な情報は全て入手します。どんなに上の立場の人の前でも堂々と振る舞い、決してへつらったり萎縮したりすることはありません。

 ですが、それは傲慢(ごうまん)なわけではないのです。ただ、あふれる自信を身にまとって「当然のようにそこにいる」といった風情であり、仮に相手がそれにネガティブに反応した場合は、すぐさま気の利いたジョークを発してその場を和ませる「察するレーダー」も持ちあわせているのです。

 部下は一様に彼を怖がっていますが、女性のみならず男性スタッフまでもが彼に憧れています。ですから、たまに皆が仕事のあとに集うバーに彼が現れると、誰もが面白いように話をしたがります。仕事場においても彼にメンターになってほしいというリクエストがあとを断ちません。

 仕事のために誰よりも全力投球しているという自負があり、自分の部下にも同じレベルを求めます。逆に自分がもし分からないことがあれば、どんな若手のスタッフにも気軽に声をかけて質問することをいといません。誰も文句が言えないのはボスが部下たちの仕事もプレッシャーも理解した上で、さらに高いレベルを求めているのだと分かっているからです。

 それはそのボスだからできることなのでしょうか? 「そういう人は生まれ持った物が違うから……」とあきらめるべきなのでしょうか? 答えはNOです。なぜなら彼も人に見せないところで努力をし、そういう資質を身に付けたからです。

 とすれば、できるエグゼクティブのしている日々の習慣や心掛けを観察すれば、きっとそのノウハウが分かることでしょう。

●今回のポイント

人は道理にかなう言動は受け入れる

[フラナガン裕美子,ITmedia]

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